わにぞう日記
日常のなかでいろいろと見たり考えたりします。でも、多くは忘却してしまいます。何かの時に思い出せるように。交流の中で意見が深められたり変わったりするのもおもしろいですね。
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「コクリコ坂から」
ジブリ映画は基本的に観て感想を書くことにしている。前回のアリエッティーに続いて今年の夏のジブリ映画「コクリコ坂から」を観てきた。今回もほとんど事前の情報を仕入れずに(監督が宮崎吾朗であることは知っていたけれど)行ってきたので、素直に感想を述べることができそうである。


部室棟の廃止を食い止めようとする少しレトロな学生運動と高校生の快活な恋愛を絡め、その親の世代が誠実に直面してきた戦争という現実を描きこんでいる。それぞれに現実的背景を感じることができる魅力的な多くの登場人物。現実の社会を基盤に、気持ちの良い高校生の心の機微を描くことに成功した気持ちの良い佳作である。
僕の学生時代の前半も、学生寮の廃寮をめぐる学生運動が盛り上がっていた時期だった。この手の学生運動はすでにほぼ特定セクトの活動の自己完結的サイクルの中に落ち着いていて、大衆的基盤をすでに失ってしまった時期だったが、この「寮闘争」については、寮に住む一般学生や、多くのサークルボックスを巻き込んでいたことに加えて、自由分散的学風の擁護という一つ大きな大義を獲得する中で、大衆的基盤を持った運動になったように思う。大学とはなんであり、自由な学風とは何者であるか。旧来からのバンカラ的な文化に対するあこがれの側面と、社会に通用するのかどうかといった側面との葛藤。自分なりに様々な矛盾の中でぎりぎりの悩みを体験した問題だった。
ただ、僕の体験した学生寮の運動と、この映画で描かれた部室棟の廃止反対運動の間には、大きな隔たりがある。この映画における廃止反対運動成功のカギは、その存在意義を明確に社会的に(この場合は明治的「教養」を背負った大人である理事長によって)承認されうるものであったこと。合理的秩序を象徴する「お掃除」を貫徹したことであった。一方でわが母校の学生寮は、むしろガラパゴス的「混沌」をそのアイデンティティーとしていた。また、社会的な意義を議論するのではなく、むしろそこから切り離された空間であることを志向した。今日の大学の現状を考えると、こういった閉鎖的、独善的な大学論の弱点から破たんが広がっていったという思いがある。学生運動の奔放さに表裏一体に張り付いたどうしようもない退廃を我々は制御できなかった。そういった過去を教訓としつつ、現在我々の掲げるべき大学や学問の存在意義はなんなのか。この映画の学園論は、その直接の答えを与えてはくれない。おそらく明治の教養主義的理想だけでは足りない。でも、そういうことを考えさせてくれた映画として僕には得難いものだった。
宮崎駿の問題意識がいろいろな側面から脚本に反映し、佳作の完成を支えたことは間違いない。ポニョと同様に海を活力の源としているが、ずっと現実的でわかりやすかった。

もう一つ。いわばディテールの腑に落ち方は実は不十分だったことを後で感じた。海、空らの住む家の構造はどうなっているのか。どのような地形にこの家は建ち、道からのアクセスはどうなっていて、コクリコ坂はどこにあるのか。学校はどこか。どういう地勢の下に港が発展したのか。たとえば「千と千尋」の湯屋にあった底知れない建物の豊かさと比較したときの部室棟「カルチェ・ラタン」の底浅さ。海の家から見渡す船の行きかう海の印象がなぜこう平板なのだろうか。ディテールへの関与を宮崎駿がしていたらこういうディテールが何やら猛烈なものを立ち上らせながら、この映画にあらぬ方向へのベクトルを加えていったのではないか。このディテールの力を引き出すことができれば、傑作ともなりうる素材だったかもしれない。こういうことはやはり旧世代のジブリにしかできないのかもしれなかった。でも、たとえば風間の父が操る船が濃霧の中を進む演出は強い印象を残した。理事長の会社の中や、東京の街の雰囲気はよく描けていたように思う。その分港町の描写には課題を感じた。
結局のところ脚本を書ける才能をどれだけ育てられるか。また、演出の中で爆発的造形を操ってしまうたぐいまれなる才能を持った宮崎駿・高畑勲世代を継ぐ者をどのようにして育てるのか。ここを乗り切らなければ、やはりジブリの将来は制約されたものとならざるを得ないだろう。

まずは映画を見た感想を書き記しておく。他人の評価はまだ何も見ていない純粋な自分の感想である。もう一度見たりすると変わるところもあるかもしれない。
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