わにぞう日記
日常のなかでいろいろと見たり考えたりします。でも、多くは忘却してしまいます。何かの時に思い出せるように。交流の中で意見が深められたり変わったりするのもおもしろいですね。
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「平和構築」東大作著、岩波新書
東大作氏については以前、核兵器問題に関するエントリーで触れた。日本に対して使用されて以降今日まで、一度も核兵器が実戦で用いられることがなかった理由について、しばしば主張される核抑止力論ではなく、核兵器の使用が許されないとする規範が国際社会に根づくことによる抑制効果こそが重要であることを、「コンストラクティビズム」の哲学的立場の紹介とともに、東氏は語っていた。
この著書「平和構築」で久しぶりに東氏との「再会」を得たが、当時の問題意識を国際社会の平和構築の問題に大きく広げて学問的業績を積み重ねつつあることがわかり、たいへんうれしかった。

コンストラクティビズムとは何か? 上記のエントリーの中で、いわゆる「リアリズム」の立場と対比して、

リアリズムの立場が「核戦力の均衡」という物質的側面に即して問題を理解する一方、「文化、規範」といったものを不確かなものとして考察から排除することによって、定量的、客観的な問題理解を可能にしようとするのに対して、コンストラクティビズムの立場は「文化、規範」といったものが事実国際社会を動かす客観的な実在であることを主張するのである。


と特徴づけた。
この本「平和構築」のなかでも、コンストラクティビズムの哲学的立場を援用しながらの議論が威力を発揮していると思う。
紛争に疲弊し、争いが争いを呼ぶ地域の問題をいかに解決するか。この「平和構築」の仕事において何が重要なのか。どうすればその地域の人々が、何らかの規範に従う状況を作ることができるのか。これまでは以下の二つの動機が強調されてきたという。

一つは、「強制力」。つまり、警察や軍など強制力によって脅され、処罰される可能性があるため、法律やルールそのものは納得していなくても、嫌々従うという場合である。二つ目は、「個人的な利益の計算」を動機としており、法律やルールを守ることによって得る利益と破ることによって得る利益を計算して、守った方が利益が大きいと思ったときにルールに従うという場合である。


これらは、上記の分類でいえば、いわば「リアリズム」の哲学的立場からの回答であるといえよう。「コンストラクティビズム」の立場からは、もう一つの重要な要素が指摘される。

ハード教授は、ルールに従うもう一つの大事な動機があると主張する。それが「レジティマシー」である。人々は、ルールや制度、そして政府などが「レジティメイト、つまり正統である」と考えた時、強制されてではなく、また個人的な利益をわざわざ計算するまでもなく、自主的にそのルールや制度を受け入れ、それに従うという見解である。


前のエントリーを引用すれば、

リアリズムの立場が「核戦力の均衡」という物質的側面に即して問題を理解する一方、「文化、規範」といったものを不確かなものとして考察から排除することによって、定量的、客観的な問題理解を可能にしようとするのに対して、コンストラクティビズムの立場は「文化、規範」といったものが事実国際社会を動かす客観的な実在であることを主張するのである。


この本「平和構築」では、この「正統性・レジティマシー」の問題について深く追及している。特に、「正統性」を持った現地政府を確立するために重要な要因を5つにまとめて仮説として提示していること。その立場から現実の問題の推移を考察していることは大変重要であり、国際的に意義のある学説であると考える。東氏によって与えられた整理が、現実問題の解決に有効に活用されることを強く期待したい。
国連の平和維持・構築の活動の現状について、一面的に全否定する、あるいはバラ色に全肯定するのではない、明確な視点を与えてくれる本として強く推したい。

この本がこのような理論的提起を行いうる理由は、最初の章に示されていると思った。東氏は、アフガニスタンや東ティモールなどの紛争地域でまさに「生命を賭して」平和構築を目指して活動する多くの現地人との出会いと、交流を語っている。印象的なのは、教育者たちの高い倫理性であった。教育そのものを全否定し物理的脅迫を加えるタリバン勢力との闘いに挑む教師。ここで負けたらこの国は終わりだ、という思いから頑張っている。専門である自然科学を含む科学や文化を子供たちに伝えること。その中で国の将来が開けると語る東ティモールの夫妻。こういった方々の強い思いの源泉は決して「恐怖」からのがれて身の安全を図る欲求ではない。また、自らの安定や経済的「利益」でもない。人間社会を動かす動因として、より「良き生」を目指す文化や規範の力があることを、そこから感じることができるのではないだろうか。
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