わにぞう日記
日常のなかでいろいろと見たり考えたりします。でも、多くは忘却してしまいます。何かの時に思い出せるように。交流の中で意見が深められたり変わったりするのもおもしろいですね。
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北京オリンピックにおける中国の自家中毒
北京オリンピック聖火リレーでの混乱と中国の困惑の本質は、中国の自家中毒である。オリンピックはあくまでも世界のスポーツの祭典である。中国はたまたまそのホスト役をしているにすぎない。中国がオリンピックを国家の威信をかけた祭典と自ら公式に位置付けて振る舞ってしまったことから、これに対するばかげた抗議行動に意味が生じた。中国があくまでもホスト役に徹する振る舞いをしていれば、スポーツ祭典に対するテロ行為も国際的に孤立する結果になるだけだっただろう。
オリンピックを国家の威信をかけた祭典として位置づけるという悪しき伝統は確かに多かれ少なかれかつてのドイツやソ連・米国などの大国のおごりによって強められてきたもので、決して中国だけの罪ではないが。
長野での「混乱」について、「中国は被害者だ」という報道があるそうだ。それも、日本民族主義者による妨害だというのである。ばかげている。なぜこうなるのか。都合の悪いことは事実を見つめることなく日本の民族主義に還元してそれを敵にして叩けば中国の威信が守れるという発想が、事実中国に蔓延していることを問わず語りに明らかにしている。この発想の生じる原因にはまちがいなく官僚主義がある。中国という「国家の意思」を先回りして慮り、それに寄り添った議論さえしておけば自分は安全であるからである。報道関係者も官僚的な対応の枠内にあることを示している。
中国の表側の反応は、現在の体制の下では結局のところ事実を曲げて恥じない報道が蔓延するということをさらけだしてしまった。報道の自由、表現の自由という価値の重要性がここから逆に理解できる。日本でも戦前において、「国家の意思」を報道の自由に優先させた時代があった。この時代のありようについて賛美することはやはりできない。報道と表現の自由を失うことにより、その国の世論は確実に事実認識から遠ざかる。報道の自由という価値は、こういった数限りない教訓から引き出された人類の「智恵」である。「靖国」の問題についてもこういう立場から見る必要があるだろう。報道の自由、表現の自由は全力で保障されなければならない。「戦争状態においては困難なトレードオフがある」という反論も可能かもしれない。しかし今の日本は戦争状態にはない。
国境なき記者団の活動家に対する日本での記者会見で、「これは報道関係者の範囲を超えた活動ではありませんか」という質問があったという。報道関係者は常に「中立」でなければならず、社会に対して一定の立場をもってかかわることは許されない。という発想からだろう。これは間違っている。国境なき記者団の活動はばかげたテロであり、中国の「敵失・自己中毒」によって一時的な意味を持たされただけのことである。その点において僕は批判されるべきだと思う。国境なき記者団の活動意図は、少なくとも公式には、報道の自由を守るという点にある。この活動意図は、まさに報道関係者が全力で取り組まなければならない課題である。報道関係者は、報道の自由が脅かされたならば、自らの存在を賭けてそれを社会にアピールするべきである。日本の報道関係者からはもうこういう矜持は失われてしまったのだろう。日本国民はすでに多くの問題において事実認識から遠ざけられているのかもしれない。
こういう状態と、「靖国」が攻撃された事態とは深い関係があると思う。「靖国」が攻撃された有力な理由の一つに、「この映画が『中立』でない」という点が挙げられているそうだ。「中立」でなければ、という論理はしばしば説得力を持つのだが、実はまったく誤った論理である。そもそも何が「中立」なのかはだれが決めるのか。結局のところさまざまな背景や立場をもった人々の意見表明の全体のなかでそれぞれが選び取っていくものでしかありえない。「靖国」を「中立性」を理由に攻撃する人々は実は、しばしば彼ら自身が攻撃してやまない今日の中国のような社会に日本がなることを望んでいるのである。
報道や表現は「中立」でなければならない、などという幻想から我々は自由になる必要がある。
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