わにぞう日記
日常のなかでいろいろと見たり考えたりします。でも、多くは忘却してしまいます。何かの時に思い出せるように。交流の中で意見が深められたり変わったりするのもおもしろいですね。
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「キャプテン」映画化
「キャプテン」は言わずと知れたちばあきおの傑作中学野球漫画である。原作漫画も、出崎哲監督によるアニメーションも、一度引き込まれると止まらなくなる魅力がある。このへんの話はまた改めてするとして(アニメの各話についてブログで語ることだってできる自信があります)、映画化について。初め僕はこの話を聞いて心配した。でも一縷の望みを室賀厚というバイオレンス系(バイオレンス系であることにむしろ可能性を感じた)監督に託した。先週の日曜日に心配を胸に観に行った。結論。GJ、室賀さん、子役たち。

パンフレット内で室賀監督はこう語っている。「胸が高鳴ったと同時に、恐怖も覚えた」。そう。「売れてる漫画だしちょいと映画化して一儲けしてやろうか」といった方策が通用しないのが「キャプテン」なのである。室賀監督自身がこの漫画に少年時代にはまったという。だから彼が「恐怖する」ということは僕にもすごくよくわかるのである。
野球というものがあり、それが楽しくて仕方がなく、だからそれに正面から向き合ってたたかうこと。その中で中学野球のチームの内外を舞台にして起こる出来事をひたすら描く。「キャプテン」はこの要素だけで成り立った本当の野球漫画なのである。
「バッテリー」も原作・映画とも僕は大好きだ。だが、「キャプテン」のピュアさでは決してかなわない。というよりも、方向性が違う。「バッテリー」では、原田巧の才能の対象はおそらく野球でなくてもよかった。あくまでも世の不合理におもねることなく自由を希求する若い魂を描いたのであり、野球はその題材であった。
ところが「キャプテン」は野球というものに対する直接的な官能を、いわば地続きに描いたものである。野球にかかわるのには何の理由もない。ただそれが好きだからかかわっているにすぎない。「キャプテン」をそのテイストを残しながら実写で撮るとすればどうすればよいか。
極論をすればどうしようもない。アニメ化であればまだしも(これも簡単ではないはずで、「キャプテン」アニメ化の仕事は、高いレベルにあるといえるだろう)、実写化である。本当のプレーと表情で見せる以外に方法はない。けれどもこういう題材では、本当の表情はそんじょそこらの俳優では決して作り出せるものではない。例えばスポーツシーンを題材にしたCMなどもよくある。それっぽい雰囲気を出そうと努力をしていることはわかる。しかしはっきりと感じるのである。「この汗は本当の汗ではない」。または、「この『歓喜の表情』は演技だ」と。別のテーマがあれば、それでも何とかなるかもしれない。でも、「キャプテン」はピュアな野球漫画なのだ。ちばあきおの世界には飾りやウソという要素が極端に少ない。ストイックの極みである。この世界を表現しようとするなら、飾りもウソも通用しない。
室賀監督はバイオレンス系の映画を撮ってきたそうだ。これは期待を抱かせる要素ではあった。バイオレンスの表現も理屈を超えたところにあるわけで、「キャプテン」の世界と通底するものがある。理屈を超えた本物を作るには何が大切なのか。いわば脚本を超えることがカギなのである。

室賀監督は自ら愛してやまない「キャプテン」の世界を実写によって再現するという「恐怖」に立ち向かいつつ、一層リアルな世界に谷口・丸井・イガラシらを配する脚本を書く。「野球ができること」を条件にした(したがって演技の面は相当犠牲にしながらの)オーディション。そしておそらく実際の猛特訓。
こうするしか成功の可能性はない道を監督は歩んで映画をつくりあげた。飾りもウソも通用しない世界であることを監督は深く知っていた。子役たちはおそらく素直にパフォーマンスを発揮したのだろう。こうして出来上がった実写版「キャプテン」は、原作ともアニメとも異なる話であるにもかかわらず、原作やアニメの本質を損なうことなく、室賀監督独自の「キャプテン」の世界を確立した佳作に仕上がった。
野球シーンが作りものでないところがよい。これは「バッテリー」でもそうだが、本当に野球ができることを大切にすることの意味が確立してきたようだ。至近距離ノックの名シーン。そして青葉戦前の特訓で、階段ダッシュ上り下りの仕上げに階段の上で気勢を上げるシーン。あるいは谷口の快打シーン。イガラシの華麗なリリーフ。これらにはウソではできない輝きがあった。(ある意味、下手なころの谷口の演技はどうもかえって不自然(笑)。下手になってみせるのも意外と難しいのだろう)
話がオリジナルであることに不満を持つ向きもあるかもしれない。原作の数々の名場面に対する思い入れがあればあるほどそう思うのもわからないでもない。が、どうだろう。室賀監督はちばあきおではない。同じ世界を再現する仕事は、今は亡きちばあきお自身にしかできないことである。あるいはちばあきおの世界の細部を他人に再現されて気持ちがいいだろうか? 少なくとも僕はそこに嘘を感じるだろうし、結局は多くの原作ファンを遠ざける結果になっただろう。
室賀「キャプテン」の世界はちばあきおの下町世界とは少し違う。大工の職人の世界にその要素を見出そうとしている。野球部の雰囲気も相当異なる。現代の実在する野球部の雰囲気をむしろベースに話をつくりあげている。だから例えば谷口の実力に対する勘違い話は、原作よりもリアルになっており、そのシビア度は相当高い。室賀監督の世界をこうして構築していくなかで初めて、実写版に通用する脚本が出来上がっていったのだと僕は思う。
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