わにぞう日記
日常のなかでいろいろと見たり考えたりします。でも、多くは忘却してしまいます。何かの時に思い出せるように。交流の中で意見が深められたり変わったりするのもおもしろいですね。
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「郵政民営化で350兆円が米国に奪い取られる」はデマか?
総選挙の主要な争点になったにもかかわらず、郵政民営化問題はまだまだ国民的理解がじゅうぶんに進んでいるとは言い難い。マスコミの報道がよっぽど貧弱なのだろう。例えば、外資がどのようにして郵貯・簡保マネーにねらいをつけているのかといった点も、じゅうぶん解説されていない。その中で、Irregular Expression さん[訂正2005/09/12:](by gori さん)「「郵政民営化で350兆円が米国に奪い取られる」というデマ」という記事は、この問題についてネットでの論争を進めた重要なものだと思われる。

Irregular Expression の記事は、

「民営化すると国民の350兆円がアメリカに奪い取られてしまう」
これ嘘っ八。
「奪い取られる」という語感が恐怖心を煽るけど、不可能。そもそも「奪い取る」って何?って感じ。郵貯に預けた預金がアメリカのものになって預金者の手元に戻ってこないなんて事があるわけないだろ。


と結論づける。そして「郵政民営化の基本方針」を引用して以下のように要約する。

郵貯と保険の旧契約は(郵政公社の期間に集めた郵貯・保険の約340兆円は)、政府保証を付けたまま公社継承法人に引き継ぐ。運用は郵貯・保険の新会社が行うが、公社勘定の運用から生じた損益は新会社に帰属させる。


そして、民営化された郵貯会社あるいは簡保会社が丸ごと買収されたとした場合について、以下のように主張する。

その会社の手元に340兆円は無い。これをどうやってアメリカが奪い取るの?<略>
一方、この公社継承法人が保有する340兆円は郵貯・保険の新会社が運用する。しかしこの運用から生じた損益は新会社に帰属するので、例えば新会社を買い取った外資がデタラメな運用をしたとしても、公社継承法人の勘定にある340兆円が霧のように消えることは有りえない。


問題の焦点をよく示していてわかりやすいと思った。で、この議論についてよくわからないと思ったことを以下に。

公社継承法人が引き継ぐ額の見積もりが過大ではないか

上記記事中の「郵政民営化の基本方針」の引用にもあるとおり、公社継承法人は、郵貯・簡保の旧契約の履行をその任務としている。これには政府保証が付いているからである。ところが、何がこの旧契約に属するかに関して Irregular Expression の記述には勘違いがあるように思う。
「基本方針」の「基本的視点」中に、新契約と旧契約に関する定義が述べられている部分がある。

郵貯と簡保の民営化前の契約(以下、「旧契約」と言う。)と民営化後の契約(以下、「新契約」と言う。)を分離した上で、新契約については、政府保証を廃止し、預金保険、生命保険契約者保護機構に加入する。(通常貯金については、すべて新契約とする。

このように、新しい郵貯会社、簡保会社のもつ契約のすべてが公社継承法人に属するわけではない。貯金のうち通常貯金は、発足の際にすべて新会社に移行する。定期貯金や簡保はそれぞれの契約期間があるのでそうはいかず、それぞれの契約の満期を待ちながら次第に公社継承法人から抜けていく。

発足時に新会社に移行するのは郵貯の場合通常貯金だけだ。郵便貯金2005資料編によると、2004年度の通常貯金の年度末残高は55.7兆円。定期制貯金については定期貯金が11.7兆円。こちらは満期になってから法人から引かれ、新会社に新契約として移行する(しないかもしれない。それは預金者の意思次第)。満期になるまでの期間は契約によって異なるが、3月未満が大部分。だから、1年もしないうちに大部分が移行することになるだろう。郵貯で最も人気があるのは定額貯金。6ヶ月すぎたらいつでも引き出せるのが人気の原因だろうか。こちらの2004年度末残高は145.6兆円。これらの貯金の年度別払戻額も公表されている。年によってけっこう変わるが、2004年度だと32.4兆円。毎年30兆くらいが新会社に移行する計算になる。
簡保については、簡易保険2005資料編[追記2005/09/11:リンクをはりました]が役に立つ。2004年度の年度末契約金額は181.0兆円。新契約は毎年11兆だから、業務が均衡しているとして簡保は10数年間で現契約分くらいが新会社に移る計算。


つまり、新会社の所有にかなり急速に移っていく。国際保有分の安定性なども考慮されているので、公社継承法人にも一定額残していくとになるはずだが、上の計算を単純に見ると、郵貯95兆(通常貯金55.7兆、定期貯金約10兆、定額貯金約30兆)、簡保10兆(新規契約の簡保約10兆円とする)の合計105兆は初年度に、その後も毎年50兆くらいずつ新会社に移行することがわかる。10年スケールで見ると、ほとんど新会社に移ると見ても良いだろう。
関連して、 Irregular Expression が

厳密に言えば郵政民営化の基本方針にある通り「郵貯・簡保の340兆円の運用に際しては、安全性を重視する」と書いてあり、基本的に国債で運用される見通しなのでFTの記事もちょっとズレているが、


と述べているのはおかしい。上記太字部分(カギ括弧内)が「基本方針」からの引用かと思っていたらそうではないのは、引用元を調べればわかる。

反対派の議論にも問題がある。状況の異なる長銀との機械的比較、現実のプロセスを表現しようとしているとはいえ、大げさで不正確な言葉遣い(「奪われる」など)が見られる。これに対して Irregular Expression につっこまれるのは致し方ないだろう。「奪われる」という言葉では実際にどのようにして資産が移行するのかがわからない。なにやら違法・不当な手段が行使されるかのようにも読める。また、預金者の手元にある日「あなたの預金は頂いた」などという書面が来るかのように表象させる言葉遣いだ。大買収の末に大破綻。更に預金者保護機能が抜本的に破壊されるなどのちょっとあり得ない未来を想定しなければ、決してなり得ないことである。こういう無理な宣伝をすると、むしろまじめな人々を遠ざけ、その反対者に利用されることをいい加減に理解すべきだろう。庶民をバカにしてはいけない。

外資への移転の方法は?

ちなみに、外資への資金の移転の方法としては、買収もあり得ないことはないだろうが、むしろイコールフッティングによってこれまでの優位性をはぎ取られた簡保や郵貯に対し、さまざまな金融商品を提示し、移行を促すという形で行われると見るのが自然だろう。もちろん、この資金獲得競争には日本の企業も参加するだろう。当然郵貯会社・簡保会社もそれに絡みうる。だから340兆がすべて外資に行くなどと考えるのは荒唐無稽だ。
なお、こう言ってしまうとただの金融商品のシェアの移動に見えるが、安全で簡便な郵便貯金を生活の基盤にしている経済的弱者のことを考えると、何故に彼らにまでマネーゲームへの参加を強要せねばならぬのかと自分は思う。

ただし、外資が事実日本の保険金融市場を虎視眈々とねらっていることは事実だし、その目的達成のために日米首脳間の会談までもが使われているのも事実である。ここに関連するページを幾つかあげておく。
「米国による日本改造」(関岡英之氏講演メモ)
日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書(2004/10/14)
「外国貿易障壁報告2005」(アメリカ通商代表部(USTR))の日本関連部分(英語)
よく分かる郵政民営化論Blog版「アメリカが郵貯・簡保マネーを狙っている2」
  ↑櫻井議員(民主党)の質問と答弁を含む:
     郵政民営化準備室は18回にわたりアメリカと意見交換していた
     米国ゼーリック前通商代表から竹中大臣に当てたお祝いの手紙(おもしろすぎ)
郵政3社は外資規制せず 民営化法案で政府

関連して、郵政民営化に対する米国政府の日本への要望が、小泉首相のそもそもの発想よりも早かったのか遅かったのかを論じているものもある。おそらく、小泉首相の政策に「なるほどこれは脈があるぞ」と思って米国資本が関心を強め、米国政府をして日本政府に圧力を加えさしめた。というあたりが本当だったとしてもいいではないか。小泉首相のそもそもの発想まで米国初だと論じるのはあまり意味がないし、おそらく事実とも異なるのではないだろうか。このことくらい、小泉さんにオリジナリティーを認めて差し上げても良いのでは?

以上自分なりの結論として:
・「お金は公社継承法人が保有するので、外資がそれを入手することはできない」という議論には無理がある。
・外資への郵政資金の移行は、金融商品のシェアの移行という形で生じうる。
・日米政府も郵政資金新規ビジネスへの米国企業参入への環境整備を進めている。


[追記2005/09/19]:シェアの移行は当然ながら現在の郵貯や簡保を引き継ぐ企業そのものの縮小へと導くことを付記しておきたい。この2社に移ることになる数千人は、激しいリストラに直面することにならざるを得ない。
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テーマ:郵政民営化 - ジャンル:政治・経済

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